吐きだめ日記 Part2

海風店主 深堀貴司

流れ者のやさしさ

海風には木工部があります。

部員はひとり、オレです。
オレは小さい頃から人に教わるのが苦手。
全部自分でやってみて、壁にぶつかって考えて落ち込まないと
納得できないややこしい性格です。

海風改築時に大工さんの仕事を
毎日毎日じ〜っと観察していて、
こりゃぁやってみたいとふと思い始めたのです。

考えて考えて合理的で安全な道には、損はないと思います。
しかし、ムダやリスクの多い場所ほど
圧倒的で美しい景色が輝いている気がします。
いつも、従業員に伝えています。
ネットで検索して答えが出るような近道は選ぶなと。

海外では小さい頃から自立の道をとことん教えこみます。
日本人は歳をとっても親に甘えたり子供を預けたり
幼稚な生き方をしています。
「そうは言っても、、」という言葉が大好きな日本人は
自立心が相当薄いのでしょう。

自分の子供達にはそういう生き方はしてほしくはありません。
子供というものは、生まれたときから親を超えている生き物です。
ですから、親の目線で全てを教え込む必要はありません。

生きる上で、笑いのある会話と
あたりまえの礼儀を教えておけば良い気がします。
最近の大人は、自分で自立できない子供を育てておいて、
困ったもんだと嘆く親が多い気がします。

今は梅雨なので、木が湿っているし気分が乗らないので
この時期は木工部は休んでいます。

初めた頃に、いろんな材木屋さんの木を見に行って、
性格上色々聞くのが無理なので、
買えそうな木をビビりながら少しづつ買っていました。

材木屋では大工職人以外は大概嫌われるんです。
そりゃそうですね、色々質問されるだけで金にならないからです。
家から車で一時間の韮崎にある材木屋に通っていると、
方言の強い社長に声をかけられました。

「木がほしいなら大工値段で安く売ってやるよ、
あんたしょっちゅう来るし、値段を聞いて駆け引きしないだろ?
来なきゃ駄目なんだよ、な?
あんた木工が好きなんだなぁ、安くしてやるから何でもいいな!」

それから仲良くなって
今じゃこんな的はずれな流れ者のオレに
大工さんより安くしてくれています。
ありがたいことです。

ロナで飲食店は大変だと知っているので
さり気なく無垢板をどんとサービスしてくれる
優しい昔のかっこいい男なのです。

失敗して考えて、また夢中で作っていると
少しづついい感じになってきては、調子に乗って
また落ち込んで、なんか違うなぁとまた考えての繰り返し。

初めは木のスピーカーを夢中で作っていて、
いい音だなぁと自分で感心していたら
人間欲はどんどん出るもので、色々つくった。

写真のテーブルは何年か前に
ふと、アメリカ南部の学生寮にある感じの
ごつい荒いダイニングテーブルを作るのだ。
それのテーブルを囲むと雰囲気も会話も豊かになるのだ。
と、理由もなく勝手に決めて作った。
案の定、生活の素晴らしい景色になった。
この板は無垢の桐の木。
無垢板は皿やグラスを置くたびに木によって音が違うのです。
これは柔らかな音がします。

この世の中、お金を出せば何でも買えます。
自分で作れば、体力と時間もかかりますが、
その時間はとても大切な人生の時間になります。

みんなに、どんどん作って売ればいいと言われます。
そろそろ人に売れるようなものを作ってみようかな
とは思っていますが、
こればっかりはその家にあったものを作りたいのです。
根がパンクですから、便利で合理的な時代に反抗して、
自分が生きている間は、保証修理も一生見るよと、
そういうことをやりたいのです。
金銭的にも高い机を買ってあげたいけれど買えない
働きながら必死で子供を育てているような人の子どもたちの机を
こんな感じのこんなサイズのこういうのを作ってほしい、と
そういうことが、たのしいだろうなぁ。
テーブル1つでもその人の体にあった
構造科学みたいなのがあって、計算方法まであるのです。
1cm違うだけで景色が変わってくるから面白いのです。
造ることはたのしいのです。

今日は、男目線で見て
この子は、たぶん、言う事聞かないだろうなぁ、
洗濯物なんかも干すの苦手そうだなぁの女性シリーズ。
でも、自立していて真っ直ぐ生きている。
魅力のありそうな女性シリーズとして、
コートニーマリーアンドリュースさんで
まずは「火消してよっ!」です。
Courtney Marie Andrews – Put The Fire Out

ですね、まったく言うこと聞きませんね。
でも、かわいらしいですね〜。
しかし、この子は流れ者の優しさを知っているのです。
さぁ張り切っていきましょう!
皆さん応援してくださいコートニーマリーアンドリュースさんの
Kindness of Strangers 流れ者のやさしさ
ではどうぞ。

はい。
ビシッと決まったところで、
魚屋で夕刻半額で買ってきた平目と真鯛の刺し身。
菊正宗の樽酒で今日もきっちり男の勝負です。
押忍。