吐きだめ日記 Part2

海風店主 深堀貴司

オレは嘘をついたことがない

今日の朝採れ野菜をイトウが東京から取りに来た。
都会では無農薬野菜は色んな場所で売っているけれど、
無農薬野菜と書いてあると、買う人が多いと言う。

何かで読んだが、化学肥料を一度使ってしまうと、
もう化学肥料は使っていないから無農薬。
とは言えない。
無農薬野菜として出せない基準がある。
要は、土壌なのだ。
一度化学肥料を撒くと10年は土壌に残るとのこと。

それを知ってから、無農薬と書いてあっても信じない。
野菜を作れば、触ればだいたいわかるが、
スーパーで売られているものはビニール包装してある。

オレが店に持って行く野菜は、
日持ちが違うとイトウが言ってくれる。
作っていてそんな嬉しいことはない。
ピーマンなんかは2週間経ってもへたれないらしい。
自然の神様も喜んでいるだろう。

今年の野菜は梅雨の晴れ間が少なくて、いまいちだけど、
採れる分にはしっかりしている。
化学肥料の野菜は色がいい。
色はいいけど食べてみれば美味しくない。

無農薬の野菜は、害虫と戦いながら必死で土から
養分をとっているので肉付きが良いのだ。
食べてみればわかる。
子供の頃からそういう野菜を食べていると、
しだいに免疫力がついてくる。
食は環境や考え方も変えてしまう。

桃が終われば、葡萄の季節になる。
ここへ来て初めて感じたが、
見ていると葡萄には週に一度
多い時は週に2回、噴射用のでかい車で薬剤を撒いている。
どこでも同じ光景を見る。

薬剤を撒いた後は、青い葉は真っ白になる。
雨が降ると、その薬剤は雨で流される。
そして、また薬剤を撒く。
雨で流される。

そして、まるまると大きな葡萄が実る。
その季節になると、毎年東京の生協の暖簾をつけた
「葡萄狩りバスツアー」の人達が、
私の家の近所にたくさんやってくる。
実際にそういう景色を日々見ているので、
周りは美味しそうな葡萄だらけなのに、
オレも家族も葡萄を食べない。

いつも言うが、どんな情報でも新聞でも
全てを信用しては駄目だ。
自分でそこへ行き見て確かめる。
何事も便利、合理的に向かうと、本質が見えず蓋をしてしまう。

不思議なことに、薬剤を撒くと害虫は出ない。
けれど、朝歩しているとわかる。
しばらくすると、
見たこともないような小さな虫が飛んでいることがある。

レイチェル・カースンも書いていたが、
薬剤の後にその害虫、ウイルスは死ぬが、
次はその薬剤で死なない、次のウイルスが出てくる。

そして、また別の強い薬剤を撒く。
次から次へとその繰り返し。
いつまで経っても、人間は消費と製造の限度に気がつかない。

小さな島国我が日本は、
色んなモノが次々と店に並びレジに並ぶ。
人々は大量に消費しておいてから、捨てる。

何処かの国の映像を見て、
レジ袋やプラスチックやストローのごみ問題を議論する。
紙のストローを置く店は、良い店とSNSで評価される。
カウンター、客席はプラ板で仕切るのが当然と評価する。

それらの大量のゴミや廃棄物は
タンカーに異臭とともに積載され開発途上国へ送られる。
荷が着くことには、多くのペーパーカンパニーに経費を抜かれ、
最後には信じられない賃金で下請けに回され貧困の生活者が働く。

そこで働く生活者は家に帰り、
養っている家族と晩御飯を食べ、
美しい子どもたちの眠る姿を見て涙する。
毎日、世界に怒りと失望の溜息をつく。
素晴らしく責任のない日本の景色。

イトウが、寿司を買ってきてくれて話しながら食す。
イトウを笑わせていたら、
どうも自分自身のシャツの半乾きが気になる。
そうなってくると、シャワーを浴びて洗濯したいし
気になってしょうがない。

イトウは察知したようなので、
「もうええやろ、帰れ!」と言ったら
さささ〜っと帰っていった。

寿司までご馳走になり申し訳ないことをした。
来月の給料は、一億円あげようと思う。(うそ)

中条きよし