吐きだめ日記 Part2

海風店主 深堀貴司

通りを真っ直ぐ行け

桃の時期になると、もも屋のおばちゃんのところへ行く。
このおばちゃんは記憶力が良くて、全部覚えている。
毎回行くたびに、「あんたは、毎年来てくれるね〜ありがたいね〜
店はどうだい?東京は大変だね、
さすがに東京のお客さんは来なくなったね、そりゃ来れんさね」
ぶつぶつと話しながら桃をむいて食わしてくれる。
「今年はどうだね?」と聞いたら
「人間と同じで、いいのもあれば、まずいのもあるさ」
と言っていた。
話も長そうだし客が来たから桃を買って「じゃあね」と帰る。

こう蒸し蒸しの日々が続くと、家の中から涼しい場所へ行きたくなる。
皆そう考えているだろうが、梅雨明けが遅れそうだ。
ワールドニュースを見ていると、
アジア全域、シンガポールまで九州の洪水以上の被害を受けていて、
被害がすごすぎる。
昨日今日で、各国のダムが溢れ出しそうな勢いだ。
日本はまだ被害が少ないほうだ。

歴史上、ヨーロッパ諸国や日本は
アジア各国への植民地支配が酷かったので、
どうもアジアへ行くと
「日本人は、上から目線で来やがって、おら金使えよ金を」と、
見られている感じがした。
そうではない空気もあるだろうが、
歴史上そういう空気感は未だにあると思うから、
どうも行こうと思う気がしない。

オレは島フェチで無人島とか海峡とか聞いただけで興奮する。

昨年秋に、シーカヤックにキャンプ道具を積んで、
一人で無人島に行く画像を見たら興奮してしまい、
これだ!と思い、家人に相談もせず、二三日旅に行くからよろしく。
「あいよ〜まいど〜」で、
次の日に飛行機を予約して対馬へ飛んだ。
対馬のリアス式海岸で、練習してみたかったからだ。

次の日、対馬でプロのシーカヤックのコーチに会い、
教えてもらうのが苦手なオレは頑張ってコーチしてもらった。
海原に細い木船に一人で浮いた感触は、涙が出そうだった。
素直に言えば、脚はガクガク恐怖感もあった。
静かなコーチは、瞬間的にオレの雰囲気、全て観察していた。

いきなり、じゃあ行こう。
そっちにに乗れと指図した。
「バランスさえ保っていれば水面をスイスイ行くから恐れるな」と。

随分いろんな景色を見て生きてきたけれど、
リアス式海岸の道もなにもない森を海上のカヌーから
眺めながら見る自然の景色に圧倒された。
船とは目線が違うのだ。
全てが水面から見える圧倒的な景色だった。

終了し、興奮していた。
もうこれは、死ぬまでできそうだから、借金してでも買うしか無い。
と、思い家に帰りじっくり考えた。

ひっくり返った時に海から立ち上がらないと死ぬので、
もう少し練習したほうがいい。と思い、
スクロールのレスキュー専門に教えてくれる場所を探した。

千葉の千倉にあったので行ってやってみた。
どうも、海の景色が対馬とはだいぶ違ったが、まぁやってみた。
なんか違うなぁと思った。
今度は、次の週に逗子あたりのカヤックへ行ってみた。

また、なにか違うと考えた。
燃えてくる感じがないのだ。
家に帰り、一気に冷めてしまった。

対馬で感じたような海沿いの自然の景色が全く無いのだ。
おまけに人間が多すぎて、吐きそうになった。
都会は糞だと思った。
ただのオシャレ感覚でアウトドアスポーツを楽しんでいる感じだ。
こりゃアラスカに行かないと無理だと思い諦めた。
都会であんなのやってたら、時間と金の無駄だ。

ザ・コーチ。氏は対馬から釜山までシーカヤックで行った。
完全に人生の静かな男の顔が出来ていた。
初心者びくびくのオレの帆先、素質は良いが無駄な力を入れるなと、ザ・コーチに教わる。
人生然り。

君の景色と想像を膨らませ風の匂いをかいでくれ。
希望の話をしよう。

前から気になっていた場所がある。
それは、太平洋の先、ベーリング海峡を真っ直ぐ行くと、
帆先の両端にロシアとアラスカの突端が見える。

そこのど真ん中を北極まで真っ直ぐ射抜く海の道。
それがロシアとアラスカの国境。
その左右にダイオミード諸島がある。

左が、アメリカのリトルダイオミード島と言われ、
右がロシアのビッグダイオミード島という。
2つの島の国境の時差は20時間。
ビッグダイオミード島には、日本人に顔が似ている先住民族イヌイットが
住んでいたけれど、ロシアがアラスカをアメリカに売る前に、
ロシアに強制移住させられて誰も住んでいないという。

リトルダイオミード島には美しい村があり、100人くらい住んでいる。

美しい村だ。
人生の果に、男はこんな場所で、たくましくも寒さに凍えながら、
スマホなんか捨てて、住民票も日本国籍も全て雑に捨ててしまい、
質素に厳しい冬を死ぬまで必死で生きてみたいと思うものだ。
帆先をビッグダイオミードにおっ立てて、
希望の海の旅に出るのさ。

「おいっ、
お前はリトルだから、あっちだ」

「あっ、、」


ライ・クーダーで、「通りを真っ直ぐ行け」
Ry Cooder / Straight Street 
ドラムが息子さんだね、いいね。