吐きだめ日記 Part2

海風店主 深堀貴司

熊のゆる締め、ユルスンで

朝の六時になると、もう暑苦しくて気持ちよく歩けない。
今朝は早起きして、朝の四時過ぎから歩き出した。
日の出の富士山がよく見えた。

オレは登山はしたことがないけれど、
登山が好きな人は、山をやめられないと言う。
気持ちのいい最高の日の出を見ているだろうなぁ。
と思いながら、ぼんやりと歩いていると、
以前材木屋の関係で知り合った
木工好きの彼の話を思い出した。

彼は大学時代登山部で、本格的にクライミングにはまり
色んな崖を登ったという。
登山の話でオレのヒーローの植村直己の話をしたら
植村さんはグループを作らず、
単独で何処でも行ったから凄いと彼も尊敬していた。

以前、彼の本を何冊か読み、
彼の生き様にオレは心を打たれてしまった。

昔から、閃くと直ぐに行動に移してしまう。
人の意見や、色んな事を考えてから行動すると、
何事も鮮度が落ちる。
失敗は少ない。
が、圧倒的な感動はゼロ。
思い出にもならない。

「君は思い込みすぎる」
と言われても、そりぁ無理だ。
大人になって少しは冷静にはなったが、
今でも失敗続きの生き方は
間違いじゃなかったと思う。

年末なのに家族に迷惑はかけられないが、
植村直己の冒険館へ行ってみたいと言うと、
いつものように、
「正月なんて帰ってきてからでもできるから
あなたが、行きたいんだから行ってきなさい」

で、次の早朝、
東京から車を飛ばし、兵庫県の日高町の
大雪の中の資料館へ行ってきた。
マッキンリー山での彼の最後の遺品が、
そのままたくさんおいてあり
感無量で号泣した。

雪の中の彼の生まれた生家を見て、
彼のお墓で、手を合わせて魂を貰って帰った。
東京に戻るとき、恥ずかしい話だが、
「君は間違いじゃない、誰に何を思われようが、決して諦めるな」
と植村直己に言われているような気がしていた。
来てよかったと、理由のない涙と勇気が
湧き上がってきたのを今でも覚えている。
それが何だったのかはわからない。

登山部の彼から教わったのは、
山野井泰史と山野井妙子夫妻だった。
とにかく、とてつもない二人だから気にしておいて欲しい。
彼らは本物のクライマーなんです。
と、言っていた。

調べてみると物凄かった。
スポンサーを付けずに、夫婦で稼いだお金が貯まると
全部登山につぎ込んで旅に出る。
夫婦ともに、凍傷でほとんどの手足の指を失っている。
「まだ指が二本あるから大丈夫」と笑顔。
凍傷でリハビリの最中に、
自宅の青梅の山をンニング中に熊に襲われ大手術をする。
それでも二人は、また山に向かう。

申し訳ないが、オレはこの夫婦は変態だ。
と思っていた。
が、ビデオを見ていると、
この人達はピュアでシンプルなだけだと気づいた。
この夫婦は凄すぎる、まるで同士だ。
とくに奥さんが凄い、寡黙でいて腹が座っている。
奥さんの表情がピュアで美しい。
ほんと、いろんな夫婦の人生があるなとびっくりしました。

こういう戦友のような、夫婦がいるんだなぁと驚いた。
オレなんかは、生活の為だとはいえ、
もしも同じ仕事を一緒にして、家に帰っても二人。
二人で寡黙に日々を過ごすことができるだろうか?
無理だな。
いやぁ、びっくらこいたです。