吐きだめ日記 Part2

海風店主 深堀貴司

Robert Crumb

五年前
ロバート・クラムRobert Crumbの選曲した
Hot Womenという世界の音楽を聞いて衝撃を受けた
彼はアメリカのアンダーグランドコミックの
先がけのイラストレーター
アメリカではタブーである
性と政治を皮肉ったイラストを書きまくった

相当の変わり者
1920年代のSP盤のコレクターで
彼の家には5000枚以上の昔のレコードがある

以前、ロバート・クラムのドキュメンタリーを見た
夜、ソファーにもたれ
きちんと整理された棚の中から
一枚の古いレコードを嬉しそうに取り出して
ターンテーブルにのせて
ウイスキーを呑みながら
小さい灯りの中
小さな音でしみじみと聴いていた

彼のドキュメンタリーを観て
衝撃を受けた
理由もなく
彼のシンプルな生き方が良かった

オレの音楽の趣味も変わった
自分の持っていた
2000枚ほどのCDは全部処分した
もう我が家にCDは一枚もない
今後も買わないだろう

1920年代の美しい
世界のジャズやブルースや
ソウル、ケイジャン音楽を聞いてしまうと
現代音楽を聞けなくなった

ロバート・クラムはものすごい数の
1920年代のアルバムのイラストを書いている
彼の書いたジャケットアルバムを
英語を翻訳しながら一枚一枚聞いているが
まだ半分くらいしか聞けていない

薪ストーブの前で酒を飲みながら
1920年代の音楽を静かに聞くのが
最高に気持ちがいい

彼はジャニス・ジョプリンで
有名なチープスリルのアルバムを書いている

ローリングストーンズが
俺たちのアルバムジャケットも書いてくれと
彼に頼んだら
「そんな糞みたいなバンド音楽のアルバムは書かない」
と、あっさり断った

その通りだ
昔から自分も好きになれない

とにかく大昔の世界の音楽は
音が柔らかくていい
もうそれだけで十分だ

彼は自分の書いたイラストブックを全部売って
フランスに中古の家を買い
アメリカからフランスに移住した
彼は今でも生きている
豊かな音楽を
ウイスキーを呑みながら聞いているだろう

彼を知らなかったら
今の自分の趣味はないだろうな
久しぶりに自分用のスピーカーを
作りたくなってきた