吐きだめ日記 Part2

海風店主 深堀貴司

老いるショック

店のカードがでけた
店のロゴ字体は、可愛い次女の習字作品
店の写真はオレがRICOHのWG-80で
画面を見ずに片手で撮った
品が良いのは
編集デザイナーの力量である

ペレストロイカのミヒャエルゴルバチョフが91歳で死んだ
彼のドキュメンタリーを見たことがある
人の命ほど大切なものはない
と、今のロシアと真逆の精神性で
ノーベル平和賞に輝いた
ゆらゆらと老いた体でチェアーに腰掛け
会話に埋もれるように
静かに穏やかに語る姿に
いい生き方だなと、見ていて呟いた

ガソリンオイルは高すぎるが
老いるほど美しいことはない
と、最近思っている
毎年、9月は人間ドックの月なので
老いることを見つめながら
健康を考える月でもある
何故、健康を見つめるかと言うと

自営業の居酒屋勤務
20代から溢れるほど酒を呑み
バブルの頃から
いろんな店主を見てきた

皆、波乱に満ちていた
好きな店の店主は皆
70年も生きずに死んだ
60代で5人死んだ
皆、人間ドックなど行くはずがない
くだらない自由を
履き違えている様だった

若い頃から
その景色を見ているので
居酒屋人らしく生きようとは
一切思わない
経営者は、ただの勤め人でいい
ハゲ散らかしていなければ
七三分けで勤務したい

死んだら終わりではなく
日々が、泥の様でも
生きている方がまだマシなのだ

いつもの問診票に書く

”自分の身体について何か思うことはありますか?”

答え
”溢れような、心の野望が見えてこない”

終了後に
先生と対面での総合判断を聞く
毎年、穏やかで
紳士的で丁寧に静かに的確におっしゃる
好きなのだ、この空気感が
家に居てほしい雰囲気

毎年思う
こういう風に己の存在を消すように
別け隔てなく、何の自己主張もせず
いつも穏やかに人の話を聞き
会話の最後を見計らい
小さなアドバイスで
相手のことだけ考え終える

自分では、わかっているのに
毎年自分の成長が見られない
腹たつ輩には
すぐにイラッとして顔に出てしまう
そして、永遠にしつこい
変えろ自分である
気分を変えて生きていきましょう

家の、ビーフシチューが家庭的で旨い
たまに仕入れに行く甲州市の山の肉屋
あそこの、甲州牛の切り落としで作ったと
旨いなぁ旨いなぁ言いながら
スープを飲み干した
料理には、その人が出る
べらぼうに考え
美味しく作る必要はない
日々の暮らしで、ごちそうさま
だけでいいのだ
抜群に旨い料理は要らない
質素でいい
時間をかけずに
爽やかに作ること

あいもかわらず
レコード収集にハマっている
3000円以上のレコードは値が高い
レコードと呼ばないし買えない
ただのプラチック

無人島に持っていきたい
宝物のようなレコード
マイルスのSketches of Spain
この一枚と
隣でいつも歌ってくれる
オレの生涯の美しい彼女
カーメン
それだけでいい