吐きだめ日記 Part2

海風店主 深堀貴司

春のセールスマン

先日、子沢山の知人がやってきた
彼曰く、最近はモテ期でビッグチャレンジですと言う

昔から、何度も説教した男である
男なら、一度くらい手の届かぬ様な
美しく頭のいい女性を
真っ直ぐ誠実に口説けと教えたが
あいも変わらず自分の守備範囲、、
何事も、手の届くところにしか手を出さない
つまらない男だった

話していると、、
ん?ん?
雰囲気が変わっていた
少しオシャレになっている
おまえどうしたんだ?
何かあっただろ?と聞くと

渋谷の毛髪クリニックに通っていて
薬も飲んで毛も生えてきて黒毛で
肌の手入れも始めた
会社の後輩に
出会いバーへ連れて行かれ
なかなかのもんですと言う
呆れて聞いていると
これからは人生ビッグチャレンジ
顔の皺を取る整形もやろうと思う
紐で顔を釣るんですと言う
口ぽか〜んで呆れ果てていると
帰り際に捨て台詞

どんどん変わっていく俺を見てて下さい
と、覚悟を決めたようなセリフを吐いて
本気の目で夜の街へ戻っていった
オレは爆笑して腹を抱えて笑っていた

ここ数日
どうにもあの言葉が忘れられない

人生は常識と非常識の隙間で
生きているようなもんだとは
思っているが
なんだか、負けた気がしてならないのだ
思い出すたびに
あのボケっ!
と最近無性に腹がたってくる
しかし、よ〜く考えてみると
彼は彼なりに人生を楽しんでいる
と、言うことだ
本質を掴みとったわけだ

もやもやしながら立川へ行く
そうだビッグチャレンジだ
あのボケに負けるわけにはいかない
洒落た服を買おうと店へ入る

パンツを買ってシャツも買った
ボタンダウンのシャツは嫌いだ
久々にGジャンを買った
家に戻り全部洗濯して干した

よし、春のビッグチャレンジだ
景色を変えようと思いつき
仕入れのトライアングルコースを
考えて知らない場所で住むことにした
車を飛ばし現地に行く
直感に響いた物件だった
すぐに鍵を借りて歩いて見に行った
台所が広く部屋も清潔だった
シンプルで広すぎない部屋だ
野菜を買うように申し込んだ
男は遊牧民を夢見る
枠を壊して生きるロマンを夢見る
窓の外には壁もなく
都会にしてはまぁまぁだ
これでいいと
自分に言い聞かせながら
ず〜っとトムトムブロソーを聞いている
彼の音はもはや
オレの生活の家具の様な
最高の環境音楽なのだ

こんどは、オレの
ビッグチャレンジの話をしよう
こんな男前なんだから
整形は皆無だな