森のカボス
この自然界の果実はじつに計算されている
地上5メートルほどの大きな木の枝の至る所
少し触れただけで、血が滴るような痛々しい刺をつけている
ですからして、おそらく山の猿や熊なども
絶対にこの美味しい果実は取れないであろう
4WDの軽トラを木の横につけて
荷台の上に乗って伸びる枝切り鋏で搾取することにした
手元から5メートル先の枝切りを操作するのは
腕がつりそうになって、むずいむずいのだ
おまけにカボスは、考えたもので
葉や木の影に隠れるように生育している
いろんな角度から見ないと見えない
よ〜く観察していると見えるので
あった!よ〜しグイ〜んと必死なのだ
もうないなと思っていたが
まだまだ隠れていてどっさりと取れた
遠くから見ると
あの人は何をしているのだと
バカを見る目だっただろう
バチっと枝を落としてボトッ!とカボスが落ちる
勝ち負けの世界だ
枝は持てないのでペンチで掴んで落とす
無農薬なので見た目は悪いが美味いだろう
焼酎に入れて呑むと最高だ
ウッドデッキが完成して
洗濯しまくりで布団もシーツも干しまくりで
じつに気持ちがいい
ベンチも置いた
まだ段ボール箱に靴があるので
下駄箱を造ることにした
反りまくっている栗の木
無骨に作った
反り返しの靴箱
けれども
オレには靴が二足だった
革靴は、ひとつあるけど
葬儀服も普段のスーツもネクタイも
ぜ〜んぶ捨ててしまったので皮靴の意味がない
一生、冠婚葬祭には出ないだろうから
必要なければ、そのうちに捨てよう
しょうがないので
来客用にスリッパを置いておく
娘や息子が泊まりにくる日が来るだろうから
布団セットを二つ新調した
何も無い旅館のような新畳の八畳間で
一人で寝れば心地よいだろう
老いて行くこれから
玄関の上がり框の段差を考えて
欅の分厚い板があったので
式台にすることにした
なんだか古風な落ち着きが出てきて
日本家屋は、いいものだなぁと呟いている
落ち着いてきた