吐きだめ日記 Part2

海風店主 深堀貴司

たからばこ

昨日から、家の中の遠くから
大昔のブルースを静かに流している
1920年〜1960がよろしい
心地よいジョン・アダム・エステス
芸名スリーピー・ジョンエステス
音が家具のようで聴かなくて聞こえてくる音
オレが生まれた年だ

見てたら、おじいちゃんを思い出した

保育園の頃、おじいちゃんが大好きだった
週末になると、兵庫の甲子園球場の近くの
おじいちゃんの家に、電車に乗って出かけて泊まった
遠くで、王さんがホームランを打って
お客さんの歓声が聞こえた
王さんまた打ったな、と
おじいちゃんは小さくうなづいた

おじいちゃんは、大正生まれ
いつも戦争の話を聞かせてくれた
おじいちんは炬燵が大好きで
いつも行動範囲は、半径1メートル
几帳面で、炬燵周りのホコリを指で摘んでいた

オレは、虫や鳥や戦争の話
いろんな知らない話を聞くのが楽しみだった
どこか遠くへ連れて行ってくれるのだ
話の途中、
いつも志ん生の落語の間のように
ゆっくり茶を啜って
茶箪笥からお菓子を一つ
ポロリと出してくれる

そのさりげない景色が大好きで
ふわ〜っ〜、、と嬉しそうに小さなオレは喜ぶ
二人でお菓子をポリポリ食べながら
ニヤニヤしている素敵な時間だった

途中おじいちゃんは、尺八を吹いて聞かせる
尺八を吹き出すと、
おじいちゃんは、物凄い渋い顔になるので
なんでそんな顔するのだっ〜?と
小さなオレはいつもゲラゲラ笑っていた

とても優しいおじいちゃんだった
今思い出しても
なんだか、ほんわかした気分になる
そんなわけで、以前からオレの家には
小さな茶箪笥がある
モロにおじいちゃんの影響
男は、茶箪笥


夜は、毎日酒を呑むので
最後に、甘い物が食べたくなる
だから甘菓子をかじりながら酒を呑む

いつも、ポツリと柿の種と甘菓子二つ選んでとる
だから、おじいちゃんを思い出して
今日、あの菓子入れの木箱を作った
もうたまらなくニヤニヤだ
そっと引き出しを開けて菓子をとる
ニヤニヤニヤニヤ

優しく美しい思い出は
心に、引き継がれていくんだよ
おじいちゃん
モノじゃないんだ心なんだよ
オレは、はやく
おじいちゃんみたいになりたいのだよ
だから見守ってくれよな、、