吐きだめ日記 Part2

海風店主 深堀貴司

何処へ行こうか

50歳代にして、働くという景色は
自分の辞書には無かった
20歳代の頃、インターネットのない時代
この国の民主主義の仕組みに疑問を感じて
アホな頭で考え、調べた
平和な国のように見えるこの国
けれども、皆税金支払い、借金地獄
60歳を過ぎてまで奴隷の様に働き続け
たまの休日は、家族で人混み溢れる場所へ行く

なんだか、この国のシステムはどこかおかしい
世界中でもこんな人生不幸せな国はない
20代でそう思いながら
自分なりに生きる勇気と目標を自覚した
子を作り暮らし、50歳で家族と離れる
誰とも合わない場所に家を建て
女も要らず、愛犬が話し相手
ひとり静かにプチ自給自足で暮らす事
そういう計画的な目標があった

しかし、夢の果て
自分に惨敗している
きちんと暮らし
働きまくっているじゃないか
クソッタレの自分ではあるが
なるようになるのだからしょうがない
タオルもきちんと干すし
田舎と大都会を浮遊している

七日の開店と同時に三日間人が溢れた
初日は、許容が崩れ
最低の仕事ぶりで落ち込んだ
二日目は、少しは持ちこたえた
三日目はギリギリのところで頑張れた
溢れるお客さんは何処から来るのだろう
と、不思議な感じだった
3軒店を作るとだいたい客の心理がわかる

この三日間で来てくれた客の
半分は来なくなる
一瞬の表情を見ただけで察知できる
商売とはそういうもので
満員で良かったですねと言われるが
全くそういう気分は皆無
商売は甘い果実ではない
今は、この店なりの基本の土台作り
雰囲気がすきな人は来るし
嫌いな人は来ない
全てを満足させようとする
今の時代と逆へ行かないといけないし
勝負は、秋過ぎの10月からだろう
どんな店でも、はじめは誰でも入るのだ

あと25年続けなければならない
淡々と続けることだ
50年で、やっと
“ザ・店”と言える店になる
それまでは、試行錯誤の繰り返し
働く意味は、そういうことだろうな
己の人生予定は、狂いまくった
これを、ギャグに変えなければならない

夜中に店を出て高速に乗り込んだけれども
あまりに疲れて眠くて
運転が危ないと察知して、SAで30分爆睡
こんなの久しぶりだ
それぞれの車の運転手、みんな寝ていた
日本人は、みんな疲れている
ラヂヲで、元首相が撃たれたと聞く
彼を批判していた人達が、
急に批判を止めた
この国はそういう国だ
精密に計画実行した男と撃たれた男
まるでタクシードライバー
主人公トラヴィスの様だ
原因は、この国の働く人達が
派遣というシステムに
呑み込まれてしまった事から
始まっている気がする

田舎に戻り、セブンイレブンで缶ビールを購入
シャワーで、汗を流し
500ml缶を呑んで爆睡
暑さで目が覚めて、水をたっぷり飲んで
草刈正雄に変身
まるで草の海にいるようだった
泥のような汗をかき
もうくたくたで終了
オレが死んだら、どうすんだろう?
草の海

夜、車の助手席へ座り
家族と廻りまくる寿司屋へ向かう
最近の店は、ぜんぶタブレットで注文だ
オレは、指紋だらけの画面を触るのが
気持ちが悪い
それぞれの客は、店に入ると同時に
カマキリの様に、何が入っているかわからない様な
中国製のアルコールをあたりまえのように
たっぷりと手になすりつけて擦っている
どこでも、いつも見る景色で馬鹿らしい
店員に進められても
“オレは皮膚病だ”と断る

家族の寿司を眺めながら
ガリを喰いながらビールを呑み
ハイボールを呑みガリを喰う
この繰り返し
レモンサワーは、甘すぎた
遠くにそびえる富士山に雪は消えて真っ黒けだった
80年代に真黒毛ボックスていうバンドがあったな
聞いたことは無いけれど
面白い名前だなと思っていた

家に戻り、焼酎んですぐ眠る
明日からまた東京
人生もっこり真っ黒け