吐きだめ日記 Part2

海風店主 深堀貴司

風の吹く夜、呆けている

山梨県の南へ向かう
延々と真っ直ぐの道を往くと富士川にあたる
開放的で車の運転も心地よい
この大きな川が
海へ向かっていることを感じる

昔は、船で行き来していたと聞いた
所々の曲には船着場があって
物資を卸し、色んな村々の
生活文化が築かれて行ったわけだ
鹿の群れが、今でも川を渡って
山と山を行き来する

古家の契約を、ほぼ済ませる
滅失登記や農地申請
ややこしい事だらけだが
なんとかなるだろう

まずは、庭のデカイ木々の抜根だ
植木のセンスはオレには無い
後々の手入れを考えると
すべて無くしたほうがいい
重機で安く抜根してくれる
建設業者を探さなくてはならないし
ここは、えへへへ交渉人としての腕が試される
何にしても全ては金だ
ある程度、全部自分でやらなくちゃならない
水回り、壁、いやはや先は遠い
あせらず、ひとつひとつだ
もう後戻りはできない

道路に接する広い土間
昭和初期からの商店
昔の商店は、今のコンビニみたいなもので
なんでも揃っていたそうだ
灯油も、食材も、農作業の物資も肥料も
人が寄り合う場所だったのだろう
売主に、昔の話を聞かせてもらう
屋号は、”鍵屋”という名だったらしく
今でも、お年寄りは”鍵屋さん”と言うらしい
いい名前だな、と思う
先々のことはわからないけれども
先に進もう

夜ひとり酒を呑みながら
録りためている
イタリアの小さな村の物語を見る
この番組が好きだ
コッポラの映画の様に
二組の家族の景色が同時進行に映る
見ていて、じつに柔らかな心持ちになれる

今日の家族は、老婆と暮らす
二人の男兄弟
50を過ぎても
一度も結婚しない男兄弟
母は、誰か紹介してあげてと笑う
男兄弟は、いつもの困った顔
二人とも優しく良さげな男なのに
何か理由があるのだろう

長男は、皮職人
趣味は音楽とバンド
弟と金を出し合い
集落から離れた山小屋を買い
仕事休みの日は、仲間と四人で演奏して
夜は、飯を作り酒を呑む
人に頼まれれば断れない優しい男
彼が、言った言葉にぐっときた

“作るってのはね
旅に出るようなもんだよ
一仕事終えると
自分が大きくなった気になる

情熱っていいもんだよな
良いの作ったなと
思えりゃ
何を作ったっていい
棚に飾って、飽きたら捨てちまえばいい

棚を作ろうと考えたけど、
CDだけで
棚の長さが19メートルもいるから
全部ダンボールに入れている
聞きたい時に、探し出して聞けばいい
自分の果てしない自由は
誰にも渡さないよ、
作る喜びに、変わりは無いさ”

あんた、いいねぇ、、
いかすぜ兄弟
今度呑もうぜ!