吐きだめ日記 Part2

海風店主 深堀貴司

ひしおは美味しい

毎朝ミニトマト
農薬を使っていないので虫に喰われまくる
虫の食わない残り物を人間が喰えばよしだけど
どうにも、人間様
虫よりも偉いと思っているようだ
消費社会で暮らす糞生意気な人間様
我とて、大量に獲って
赤くなりだしたら喰うておる
罰は、何度も会っておるので
そういうことだなと
何度も反省する馬鹿人間
冷やしトマト喰ふ

がんばって山梨代表の高校野球を見たが
もはや暑すぎて好きな高校野球も見れない
録画してみるようなもんじゃないしな
パリパラピックの画像が出ると
お祭り騒ぎにイラッとくる
金と権利と癒着
金儲けの大組織
勝てば、いちいち金メダルを噛みしめる
汚らしい不細工な映像に
吐き気がしてきて抹消

毎週録画している新日本風土記
という美しい番組
酒を呑みながら見る
若手の頃からコツコツと
全国を廻る旅で見てきた街の景色
人の優しさ、素朴な暮らしの景色を思い出しては
涙腺うるっとくる
旅は、人を豊かにさせる

ずいぶん昔の週末
毎週銚子に通っていた
あの頃の都会暮らしはストレスが多く
我慢する自分が情けなく
海を見ないと心持ちが折れそうになった
誰しも、弱い部分をさらけ出せばラクになる
分かっていてもできない人もいると思う
タフな人間は嫌いだ

番組は、2両編成の銚子電鉄の旅
映る場所場所曲がり角
あっ、あの魚屋、饅頭屋
ぜんぶ記憶している景色だった

映像は外川駅に出た
銚子の突端に外川駅がある
そのまた突端
築50年の木造平家を借りて住んでいた

眼の前は海、湯船から海が見えて
一日中波の音がサラウンドで聞こえた
どんな音楽よりも素晴らしく
海が荒れると低音が増す

隣の漁師の爺さんから教わった
ここの銚子の突端は、黒潮と親潮がぶつかって
良質のプランクトン魚の餌があるわけだ
利根川からも水が流れてくるだろ?
三つの栄養が混ざるわけだから
良質の魚が取れるわけだ

漁獲量日本一の理由はプランクトンかと納得
懐かしい画像がたくさん残っていた

隣の爺さんは釣ってきた高級魚をくれた
婆さんはイカを捌いてくれた
いつも焼いたり煮つけたり刺身で食った
朝、大型船がくれば漁港へ行く
遠洋漁業の乗組員にお菓子を渡すと
トロ箱にサンマを入れてくれた
自分にとって、仕入れ値はゼロだった
イワシは海鳥の餌にばら撒いていたし
今じゃ信じられない光景だった

目の前が海なので
東日本大震災で終わったと思った
爺さんに聞いたら
岬の突端から波が二手に分かれて
奇跡のように津波が来なかったと言う
家は無事だったが
あの恐怖でもう住めなくなった
何年か後に、爺さの家に寄ったら
爺さんは亡くなっていた
お婆さんひとりで暮らしていた
すべてが、懐かしい
優しい人と、街の景色の思い出だ
人は、たくさんの思い出の中で生きている
新規の良い景色を作ろう