吐きだめ日記 Part2

海風店主 深堀貴司

空間と荒野

ここ10年の服装は、文字無し無地のみ
一文字でも英文字あれば買わない着ない
メーカーの宣伝しているみたいだから
トランクスと肌着は
国産の綿100%で真っ白のみ
見た目も清潔で着ていて肌触りがいいから
太陽光で綿の真っ白な洗濯物が並ぶ景色が好き
さすがに、この蒸し暑さ
Tシャツポリエステル100%を
買い換えることにして全部捨てた
いつものお洒落着のことならなんでも揃う
ファッションセンターしまむらへ出向く
無地を選んでいるとふと目についたTシャツ
英文字は、ありえないがじっくりと文字を読んでみた

オレ和訳すると

“荒野を探検する
行かなければ?
恐怖を感じる事も
何かを知る事も無いだろう
いいから、とにかくそれをやってみろ”

心にグッときたので
手掴みでレジへ行く
こういう文字は、まぁいいだろう
何が言いたいかと言うと
シャツ文字を見るたびに
こいつド級の馬鹿だな、と思うから
ちゃんと服を選んで着ろと言うこと

豪暑、峡南へ走る
今日は、ガス屋さんと
キッチン器具の配置と接続の打ち合わせ
道中、35年ぶりにエレファントカシマシを聞く
25歳の頃に毎日聞いていたアルバム
懐かしいアルバムを聞いてみると
あの頃が脳裏に浮かんできた
今の自分の自分に対する想いも
あまり変わっていないなぁと感じ入るが
少しは、柔らかくなった様な、
曖昧な部分も、、
昔に比べ、
圧倒的に自分を許せる力を
自分が掴んだ気がするが
会えば、昔の自分を抱きしめるだろう
まぁ少しは、成長したとしておこう

左官屋さん、大工さん、クロス屋さん、ガス屋さん
今日は大勢いた
この暑さで
外で働く左官屋さんは大変だ

クロス屋さんの仕事を静かに見ていたが
老職人の腕は凄かった
魔法の様に切断して、魔法の様に貼り込んで行く
オレが、境目がわからないと言うと
そういうやり方があるからねと笑いながら、
いつも、気になっているんだけど
11時に、前の寺の鐘が鳴るんだよ
何故だろう?と思っていると言う

何か理由があるんだろうなぁ、、と
老職人静かにうなずく
11時5分に鐘が鳴った
う〜ん、、と鐘の音を聞いていると
職人の手も止まった

老職人、昼時になると
ひとり心地よい場所を選び
床に紙を敷いて背筋を伸ばして座り
森を見ながら弁当を食べ始めた
食べ終わるとお茶を飲んで
しばらくすると
横になって昼寝していた
じつにシンプルだ
悟ったような景色が
背中越しに映っていた

まともな男だな、と
蝉の鳴き声を聞きながら見ていた

業務用の器具を運び設置する
自分の使いやすいようにガス屋さんに伝え
どうにも水道の位置が納得できないので
施工の責任者と話し込む
キチンと話すので
真剣にみんな受け入れてくれる
彼らがプロならオレもプロ
職人気質の心意気は互いにわかる
どうせやるなら
互いに良いものをつくりたいだけ

施工責任者と話し込む
いろんな話をする
氏は、大手企業の音響技師だったそうで
音の鳴りの話をする
互いに興味深く話が面白かった
湾岸戦争の軍用機に乗る飛行士の
ヘッドフォーンの中の小さな電子部品
一つ1千万円するそうだ
アイルトンセナやらの車の音響の部品や
アメリカからの受注生産で
24時間フル回転で製造していたという
面白かった

スピーカーから
壁の反響を使って音を出し
人間の耳の擬似空間を作りだす
壁と音の話をすると
さすがに、元音響専門のプロ技師
波の様な仕組みを話してくれて
じつに楽しかった
しかし、どこも暑すぎるが

いろんな人が
いろんな場所へ出向き
いろんな事を学ぶ事は嬉しいことだが
己の、運を掴んでやるという
その人の持つ
実力でもあるだろう

行かなければ?
恐怖を感じる事も
何かを知る事も無いだろう
ということだ