吐きだめ日記 Part2

海風店主 深堀貴司

コミュバスと小さな旅

東京生活は暑すぎる
ベランダから見えるのは
地獄のような熱帯アスファルト
買物にも行く勇気無し
部屋から出ずに過ごす
汗びっしょりの配達の方
コイズミの扇風機を運んでくれてありがたく
DCモーターのそよ風が部屋を包み込んだ
腹は減ったが辛抱で
部屋の模様替えに没頭する
何処に居ても落ち着いた
静かな景色で過ごしたい

最近コミュニティバスにハマっている
150円で乗せてくれる
隣の二駅に連れて行ってくれる
車高は低く身体の不自由な方や
老人に親切な造り
優しいバスなのだ
駅前に行くといつも繁盛している
焼き鳥屋さんがある
とても美味しい
けれども、席間狭く
いつも客の会話がうるさい
BGMもうるさい
いつも満卓で早い時間でないと座れない
とても疲れるので
誰かと行っても
うるさいので声を張らないと聞こえない
周りの音に耳が疲れて
すぐに会話が止まり
もう帰ろうとなる

静かな店にコミュニティ・バスで行く
一時間に一本のコミュニティ・バス
狭い路地を歩くように走る
ゆっくりでいいゆっくりで
涼しい座席で空き空きだ
20年前からたま〜に行く
大好きな居酒屋へ行ってきた
遠くて行くことができなかったが
コミュニティ・バスのおかげで行けた

美人のおばさんが営んでいるその店は
三時からやっているけど
美人ママは、暖簾を夕刻まで出さない
引き戸に手にかけると
あらどうも〜と開けてくれる
すいません早くからと言うと
いいのよいいのよと呑ませてくれる
料理は全部ママの手作りで
全て優しい味がする

薄暗い店にはBGMは無く
メニューも何も無い
客は、常連の方ばかりで
それぞれに威圧感も無い
じろりと見据える人は居ないし
それぞれに自然体
小さな会話で楽しんでいる
心持ちが落ち着くのだ

昔から誰にも教えないし
これからも誰にも教えない
客は、一切のコスパを考えないし
自分だけの世界にも入らない
ママが、静かな口調で
今日は何々があるわよ、、
じゃあ、それ下さいと言うだけだ
今日は、鯖の塩焼き
海老の素揚げ、バラ肉と玉子を食す
胃袋が、喜んでいるので
チューハイを頼んで
カットレモンを入れてもらい
ガブガブと美味しく呑んで
コミュニティ・バスの時間を見る

駅まで歩いて駅員さんに
トイレに行かせてくれないか?
いいですいいですどぞどぞと
駅のトイレをお借りする

障害者用の大きなトイレの前で
車椅子の女性がず〜っと待っていたので
開かないのですか開けましょうか?
と、声をかけた
簡単に開いたのだけれど
おっさんが何やら鏡を見ながら
睨みつけて
勝手に開けるなと怒鳴り散らした
そのおっさんは平然と
障害者用のトイレで長々と鏡を見ていたので
駅員さんを呼んでくるねと
車椅子の方に声をかけ
駅員さんを連れて戻ると
男は怒りながら出ていった
駅員さんは、申し訳ないですと言い
女性は、ありがとうと言い
自分でトイレに入った

コミュニティ・バスの中で
心地良く揺れながら
なんだかなぁ、、
生きづらい世の中だな、、
うるさい空気も
弱者に冷たい空気も
大嫌いだぜ、、
と、一人呟いていた
いつも自分の眼前の景色だけは
優しくて
良い空気に変えていこうと思っている
59歳、愉快痛快阿呆の男也