朝三時半
台所からの醤油の甘い匂い
まな板の音、水の音、炒める音で目覚める
家者が、竹刀で殴る娘の弁当を作っていた
今日は、剣道部の試合
めずらしく娘は、早く殴り倒したいので
興奮して早起きしていた
午後に迎えに来てくれと言われる
殴られる前に迎えに来いと言うことだ
六時に家を出て山へ向かい山水を汲みに行く
賽銭箱に入れる小銭を忘れた
申し訳ないと一礼して謝る
ゴボゴボと湧き水は溢れている
畑の稲穂は景色を描いていたし
少しづつ明るくなる雰囲気には
何ともいえない美しさがあった
温かい珈琲でも淹れてくればよかったなぁ
と、軽バンを停めて山を眺めていた
少しづつ明るくなってきたけれども
家に戻るのもなんだかつまらぬので
近くの集落へ行ってみようと
大昔の金山で働く人々が作った近くの村へ行く
集落には、別々の顔があって
村々で暮らす人達の歴史が刻まれている
ふと
広い原野で暮らしてみたいと考えている
何も無い原野で開拓者のように
遠くの景色を眺めながら
溢れる希望を描きながら
造りながら暮らしたい
夢のまた夢の世界
何かを掴み取らなければならない
いつも思いを巡らせている
我とて、いつも自分を睨んでいる
考えない日々と
時間の無い日々なら
貴様はどうだ?と、我に問ふ
男として
生きる価値は無いだろう
と答えるだろう
現実と理想を想いながら
いつも遠くの景色を眺めている
麓へ降りると面白い寺が見えた
坊主の蘊蓄は、面白い
”隣のレジは早い”
と、書かれていた
この坊さんは、オレと話が合うだろう
一度、訪ねてみようと思う
男なら、、
泥のように吐きそうなギャグを
いつも心に思い描いていないと、、
人生に色を添えるように
午後、殴る娘曰く
“三人殴り倒したけど、個人戦は三位だった”
あっそ、、
もっと殴れ