吐きだめ日記 Part2

海風店主 深堀貴司

天使とバッハ

心持ちの良いお客さんなら
気づいていると思うけれども
ここ数年で
どんな店でも客層の心象が変わってきている
自分とてひとり呑みに行くので
見ていればわかる

うちの店でも
予約をしてくれるのはありがたいけれども
畳の席でお願いしたいとか
子供の椅子を用意してほしいとか、、
二階の席でとか、、
誕生日を祝いたいとか、、
色々とおっしゃる
幼児なんですが大丈夫ですか?
とか、、もう色々だ
個人店の小さな店だ
いちいち対処できるはずがない
何も主張する店ではないので
他の客を見て
自分の頭で考えてくれと言いたい
怒っているわけではない
人間としてあたりまえの事だと思う

わたしたちが居酒屋で呑んでいた頃は
相席はあたりまえだったし
オレなんぞは家族と居酒屋へ行く
色んな客がいるし、気にしない
家族と笑いながら呑んで帰る
さすがに、タバコを横で吸われると
やめてくれと自分でキチンと言うし
店側がどうとかではなく
人間なんだから身を守るのも
全責任は自分
嫌なら初めから行かない

そういうあたりまえの景色が
今は少なくなった
全部店側の対処でしょ?とする
それ、おかしくないか?と思う

ついたてのある二階へ案内すると
相席なので慌てて降りて
何も言わずに
しかめっ面で帰る方も居る
人それぞれの考え方なので
その人の考えはそれでいいし
批判はしないが
店は、その店である
横山やすしが居たならば
アホかオマエは!
暴言一言で済んだだろう

けれども
何十万も金を使うでは無い
日々の酒を呑みに来るだけの
ちっぽけなことで
その時間損をしたくない様な
コスパなんちゃら重視で
我が身を守る様な
必死の都会人の形相を見ていると
じつに寂しくなる
第三者の眼で
今の己の思考の姿を見てみなさい
どうでもいいよと思うのだ

私達庶民が
この国で生きているのは
この国に、もはや希望はないが
日々を少しだけでも
明るく照らそうとしているだけだ

職種に限らず
日々会う仲間や人
たとえ、その瞬間でも
含み笑いやニヤニヤだけでも
良い空気感でありたいと思う
じゃなきゃ生きていくのがしんどすぎるぜ

もうすぐオレも引退するだろう
けれども
ギャグと無償の愛の様なことは
若手に伝えていきたい
自分もたくさんの
怒りや憎しみや誠実さや
溢れる優しさを
先人から教わったのだから
誰かに返さないと
先人に失礼だと思っている

こんなアホでもオレはオレ
時代や人がどうであれ
ブレーキを踏んではいけない
諦めてはいけないのだ
ニャロメ〜の熱く暑苦しい心持ちだな

今朝、ブレーキを踏んだタイヤの後ろに
小さな花が咲いていた
一日の小さな天使だ
良い事があるだろう
誰かに優しくしよう

朝の散歩では葡萄の粒が大きくて
葡萄の薬品噴射機の知らぬおじさんが
笑顔で通り過ぎて
おはようの挨拶をして
家に戻りシャワーを浴びて
アイスコーヒーを呑んで
大好きなバッハのアルバム
ゴルトベルグ変奏曲をず〜っと
繰り返し流している
家族女子部は全員寝ている

美しい朝
明日からまた大都会
てきとうにがんばろうぜ