寒すぎて外に出る気持ちがないので運動不足
たまらず市民温水プールへ二日続けて行った
何事もやりだしたら夢中になる

週に二回だけ行くことにした
歳を重ねるごとに
思考と行動と体力は反比例していく
歳を重ねるごとに
自分の心模様に鈍感になる
もう若くはない
自分の心を制御する自分も必要
プール代金410円
回数券を買うと260円

自分の祖先は遊牧民
前世は魚類
小さい頃から泳いだり潜るのが好き
水の流れに同じ景色は無い
水の中は無の世界
海の中も無の世界だ

海に憧れた二十代
会社組織に属し給料を得る仕事だった
組織に属することが
どれほど人生のストレスになるのか
酒を飲んでは考えていた
女性を口説きながらも考えていた

彼女とも別れ
会社勤めも辞めたら退職金がもらえた
チャンスだと思った
何処かの島に住み
預貯金が底をつくまで
親親戚全ての関係性を捨て
一切働かないことにした
援助を嫌い自立心が強いので
しょうがない

20代の頃は
駄目になっていく自分の姿
自分はホンモノかニセモノか？
乞食になる勇気があるのか？
自分をきっちり見届けたかった
今思えば
自分に正直20代可愛いもんだ

あの頃は無職
石垣島に住んでいた
朝起きて飯を食って図書館へ行き過ごす
昼寝をして、夕方は釣り竿を持ち
海へ行きアイゴを釣りにいく
釣りに興味は全く湧き上がらなかった
アイゴが２尾釣れたらトボトボ帰る
毎日アイゴしか釣れない
魚を捌いて生姜で煮付ける
一尾は刺し身にして
コーレーグスと醤油で喰った
毎日同じツマミで泡盛を飲む

何処にも属していない自分
約束のない明日
生産性のない考えない日々
頭はスポーツ刈り
髪の毛が邪魔になると海で刈る
髭も剃らなくていい

ママチャリを買い
キャンプ道具と米と缶詰めをしばりつけて
船に乗っていろんな島へ渡り野宿した
生きている嬉しさを感じ
毎日同じ日々を過ごした

日々暇なので、やることもない
知り合った海士漁師のおじさんの
小さな船サバニに乗り
いつも漁について行った
嫌がられなかった
サバニを出さない日は
おじさんの話を聞きながら
ぼーっと泡盛を飲んでいた

漁師のおじさんは
魚が取れない日は禁酒令
母ちゃんが泡盛を飲ませてくれなかったから
おじさんはコーラを呑んでいた
オレが母ちゃんに隠れて
泡盛を注いであげると
おじさんは嬉しそうだった

おじさんの方言は昔の沖縄方言なので
酒が進むと何を言っているのか
わからなかったので
ウンウン言っていると
おまえ話聞いているか！と
よく叱られたが
おじさんは優しかった

おまえは潜りの素質があるから
海士になるなら教えてやると言われた

一人でサバニを漕ぎ
獲物を取り、獲物を売る
男なので
そういう暮らしに憧れていた

男には憧れという時代がある
仮面ライダーになりたい
ウルトラマンになりたい
悪い奴らをしばき倒したい
そんな子供時代があった

ブラジャーを付けて女装したい
スカートを履きたい
誰よりも可愛く見せたい
そういう男子もいただろう

誰しも、誰がなんと言おうが
それが正しいと信じる
憧れの時代があったはずだ

夜の海へ潜るおじさんの姿を見ていると
夜の海への恐怖心が離れなかった
大きな魚は夜の海で寝ているので
突きやすい
海士はライトを照らしながら潜る
夜の海は、昼とは真逆の恐怖の海だ

夜の海への恐怖に怯え
憧れの海から
腰抜けの自分を見つめて
都会へ戻った
考えるな
そして今がある