カウンター用の分厚い赤松の板を
山梨から東小金井まで軽トラジョニーで運んだ
車中では、ずっとルー・リード地獄を流していた
キッチリと縛っていたので高速道路で
びくともしなかったけれども
ロープのずれがないかと
ビビりながら運転席のミラーを
ずっと気にして見ていた
到着して大工さんと四人で運んだ
オレの南京縛りは職人の縛りではないと
笑われたが、よく運んだねと驚いていた
店の木の看板を外してもらったので
掃除してオイルを塗った
たぶん20年ほど前
大工さんに、看板はオレが彫れと言われて
必死で彫った木の看板だ
20年間、雨風に打たれながら生きてきた木の看板
オイルを塗ってまた一緒に頑張ろうなと
思いを入れて塗った
もう何の木だったか忘れた
階段作りが始まった
回り階段の構造を見ていると
眼が回りそうに複雑だ
よくこんなモノが作れるなと
担当大工と話していた
彼は、構造を考えすぎて頭の中が
燃えそうだと考え込んでいた
しかし、複雑で凄すぎる技術
素人木工部のオレには
何が何だか分からない図面だった
職人の、男の背中は素晴らしい
次は滑車が待っているようだ
大工さんは10時と3時に休憩する
体を休ませながら段取りの打ち合わせをする
オレが行くと、小さな冷蔵庫から
コーヒー缶やらを出してくれる
大工さんは3時頃になると
何気なく一階に集まって
仲良さそうに
それぞれのおやつ袋を持ってくる
たまらず笑ってしまう
あんたら子供かっ!と爆笑すると
小さなビスケットを三枚くれた
疲れたら甘いものが喰いたくなるんだと言う
なるほどなと感心する
おやつ袋で思い出したが
下の息子が春から就職が決まり
港区芝でひとり暮らしを始めた
オレも住んだことのない大都会だ
家賃の半分は会社が出してくれると
なんとも羨ましい限り
アパレルの商社と言っていたので
それは、何の仕事だ?と問うてみても
なんだかよくわからないんだ
とアホなことを言っている
なんだか昔から変わらない
いつも楽しそうな面白い息子だ
担当のお世話様がいるんだという
なんだそれ?研修係か?と問うてみても
お世話をしてくれる人だと言う
みんな優しいんだと言うので
そのうち研修係に殴られるぞ
よく採用してくれたな〜と呆れていた
お菓子袋で息子を思い出したとは、、
続くしつこいルー・リード地獄
電車の中でも聞いている
今日はモダンなサウンドに酔いしれよう
歌詞を訳している猛烈なファンがいる
その訳詞を引用
まるで、世界に手に届きそうな
美しいサウンドだ
まだまだルー地獄である
“Modern Dance”
多分俺はアムステルダムに移り住むべきか
巨大な運河の傍の横道に
ゴッホ美術館で午後を過ごす
夢のようなゴッホ美術館
それかタンジールを見に行こうか
今とは違う生活 違う不安
もしくはエジンバラにいるべきか
エジンバラのキルトに包まれて
モダン・ダンスを踊りながら
モダン・ダンスを踊りながら
または南フランスに農場を買うべきだろうか
そこでは風が弱くて村人達が踊っている
お前と俺
二人して月の下で眠る
水無月の下 昼まで眠る
そしておそらくお前と俺は恋に落ちる
かつて持っていた気持ちを取り戻して
お前は俺に抱いてほしくなり 夜に触れる
その光は輝かしい
畏れるほどに輝かしい
モダン・ダンスを踊りながら
モダン・ダンスを踊りながら
クソッ またはユカタン半島にも行けた
そこでは女は女らしく 男は男らしい
誰も混乱したりしない
自分の居場所を失う奴もいない
人類がいるべき自分の場所を
多分俺は都会での生活は向いていない
排気ガスの臭い 争いの臭い
それで多分
お前は妻になりたくないんだろう
妻になるのは人生じゃない
モダン・ダンスを踊ろう
モダン・ダンスを踊ろう
だからきっとタンガニーカに行くべきだ
そこには河が流れ高く険しい山々
もしくはインドに行って チャントを学ぶ
マントラのダンスでロマンスを失う
導師が必要だ 法則が必要
俺達が見たものを説明してくれるものが
何故いつもこうなるんだ
最初のキスのあとはいつも下り坂
多分 俺はロッテルダムに引っ越すべき
多分アムステルダムに
アイルランドに移り住むべき
イタリア スペイン アフガニスタン
雨の降らない場所に
または多分俺はモダン・ダンスを習うべきだろう
役目が変わる場所でモダン・ダンスを
一緒にいるのが誰か知らなければ触れることはないだろ
今週も 今月も 今時分は
今週も 今月も 今時分は
モダン・ダンスを踊ろう
誰が一緒にいるのか知らなければ
パキスタンに アフガニスタンに移り住もう
誰が一緒にいるのか知らなければ
誰が一緒にいるのか知らなければ
それで多分 お前は妻になりたくないんだろう
妻になるのは人生じゃない
モダン・ダンスを踊ろう
一緒にいるのが誰か知らなければ触れることはないだろ
モダン・ダンスを踊ろう
役目は変わっていくんだ 踊ろう